石川綜合法律事務所

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石川清隆コラム

夜桜/高波壮太郎高波壮太郎氏について
絵画とは何であろうかといろいろな人が論じている。私はきっと言葉や音楽では表せないヒトの知覚の深いところの無意識の形象の認識を表現するものだろうと思っている。ヒトの無意識の中にこの種の認識がなかったならば、ヒトの心は暗闇の深遠にのみこまれてしまうかもしれない。それゆえ絵画を見て、ヒトは美しいと思い、穏やかと思い、また安らぐのかもしれないし、神秘さをも感じ、自分が存在することの喜びを感じるのだろう。

高波さんの絵は、理性が形と色を組み合わせて描くようないわゆる「頭で作った」絵ではない。心の深いところにあるものを表現した創造である。しかも、個展のたびに深化してとどまるところがない。
手彩色の版画について言えば、初期のものは激しいパトスを感じた。しかし高波さんの夜の枝垂桜を描いた版画が我が家の居間にある。春が過ぎ、いつしか冬になっても、この「夜の枝垂桜」は季節感を越えていて違和感がない。時々この絵を見てこれは「桜」の絵なのだろうかと想うことがある。カーブを描いて放散する無数の点の集まりが命の輝きをもっていて「一顆明珠」のように見える。

高波さんの油絵は、2002年のパリでの個展からいっそう深化している。厚く重ねた独特のマチエールは、手彩色の版画の表現とは異質で色の重なり合いがノートルダム寺院を落ち着いた佇まいで描いているかと思えば、色の重なり合いが形を離れて「波」を描いていたりする。油絵の「桜」はその後の更なる発展したものになるだろう。青い空と桜と思って見ているといつしか青い空と桜に象したなにかが見えてくる。この点が高波さんの作品の面白さであり、楽しみなところである。

私は、高波さんを人生で出会えた最良の友人の一人と思っている。20数年前、偶然であって、それ以来毎月のように会食している。そこでは芸術論、音楽論はもとより、「雨夜の品定め」までいろいろな話題があり、そこで私は、高波さんのパワーで元気を取り戻すことができる。レンブラントが酒の肴になることもある。バブル期にレンブラントの大作だと称する贋作がなぜ横行したのか、20数年前あの孤独な晩年の自画像の前で起こった私的な悲劇など、笑いあり涙ありの飲み会であり、また私と高波さんと彼の作品をめぐる議論の場でもある。

高波さんは、周りの誰もが知ってのとおり、コネや学歴に頼ることなく自分の力をそのまま伸ばしてきた人である。昔、「個展を開けたらいいなぁ」と言っていた人が、気がついたら、世界で評価をうけるまでになっていた。彼の作品は、時流におもねることはないし、本来、創造というものがどういうものかという事もはっきり物語っていると思う。


※今回、当事務所のホームページ立ち上げにあたり、ご本人の快諾をうけ、高波さんの作品を当ホームページ内の随所に掲載しております。

高波 壮太郎 略歴

1973年
多摩美術大学油彩科卒業。在学中に中本達也氏に師事
1988年
清水凡亭氏と「絵のある俳句展」を高島屋京都店にて開催
1998年
高島屋東京店にて個展開催('00,'02,'03,'07)
2002年
吉井画廊(パリ)にて個展開催
吉井画廊(銀座)、ギャラリー・ラ・リューシュ(麻布)にて帰国展同時開催
2004年
ルーブル美術館で販売される本「猿俳句12選」の原画展をギャラリー・ラ・リューシュにて開催
JR名古屋高島屋にて個展開催('07)
高島屋岐阜店にて個展開催
吉井画廊(パリ)にて「猿俳句12選」の原画展開催
2011年
高島屋東京店にて個展開催
2010年、横綱白鵬関の化粧まわしの原画を作成。その原画と実際の化粧まわしが展示された。横綱白鵬関から「一つのことに打ち込んでいく気持ちの強さ、大相撲に通じる気迫を感じました」とのメッセージが寄せられた。
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